更新日:2025.12.09

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2023年10月から始まったインボイス制度。経過措置として認められている「80%仕入税額控除」も、2026年9月30日で終了し、10月からは50%へ縮小されます。控除率の変更を前に実際に何をどう見直せばよいのか、漠然としている方も少なくありません。また、以下の業界はインボイス制度対応を早めに見直しすることをおすすめします。
本コラムでは、インボイス制度の概要と実務で押さえるべきポイントを整理したうえで、卸売業・小売業がインボイス対応の見直しを取り組むべき理由について解説します。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除を受けるために「適格請求書(インボイス)」の保存が必要となる制度です。インボイスには、発行事業者の登録番号や取引内容、税率ごとの消費税額など、法令で定められた項目の記載が求められます。
仕入先がインボイス発行事業者でない場合、原則として仕入税額控除ができなくなります。そのため、取引先がインボイス発行事業者かどうかの確認や、請求書の記載内容のチェックが重要となります。
現在は、インボイス未登録の免税事業者からの仕入れについて、仕入税額の80%を控除できますが、2026年10月からは50%に縮小されます。この変更により、免税事業者との取引が多い企業では、税負担が増加する可能性があります。
■猶予期間と控除割合
| 猶予期間 | 控除割合 |
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 仕入税額の80% |
| 2026年10月1日~2029年9月30日 | 仕入税額の50% |
免税事業者や小規模事業者の中には、インボイス制度への理解が浅いケースもあります。制度の概要や控除制限の影響をわかりやすく説明し、登録のメリット(取引継続、信用向上)を伝えることで、関係性を損なわずに登録を促すことが重要です。
既存の仕入先が登録を見送る場合に備え、登録済みの事業者との取引ルートを確保しておくことも重要です。
仕入税額控除が50%に制限されることで、実質的な仕入コストが上昇します。この影響を吸収するためには、粗利率を見直してコストダウンも検討しておきましょう。
卸売業と小売業で共通することは、多拠点展開で仕入れや販売先の取引事業者数が多いことと、拠点数に比例して証憑が増えることによるインボイス制度対応が手間になることが挙がってきます。業界ごとに詳しく見ていきます。
卸売業は、日常的に多数の仕入先や販売先と取引を行うため、請求書の発行・受領件数が非常に多くなります。特に、取引先ごとに取引条件や納品形態が異なる場合、請求書の管理が煩雑化しやすいです。また、取引先の中には、インボイス登録済み事業者と未登録の免税事業者が混在しているため、仕入税額控除の適用可否や控除割合の判定が都度必要となります。
仕入先ごとに請求書のフォーマットや記載内容が異なり、「適格請求書」の要件を満たしているかの確認作業が煩雑になりやすいです。特に、紙と電子の請求書が混在している場合や、手書き・システム発行など発行方法が多様な場合、確認・保存・管理の対応パターンが増えます。また、適格請求書の要件を満たしていない場合は仕入税額控除が受けられないリスクがあるため、経理部門は細心の注意を払う必要があります。
注意すべきポイント
仕入先ごとに請求書のフォーマットや記載内容が異なるため、「適格請求書」の要件を満たしているかの確認作業が煩雑になりがちです。システムや運用ルールを見直し、適格請求書のチェック体制を強化することが求められます。
数の仕入先から多種多様な商品を仕入れるため、受領する請求書の件数・種類が膨大です。特に、季節商品やスポット仕入れなど、単発取引が多い場合は、毎月新規の仕入先が発生することも珍しくありません。仕入先ごとにインボイス登録状況が異なるため、商品ごと・仕入先ごとに控除可否や控除割合を判定する必要があります。
多店舗展開の場合、各店舗で請求書処理が行われることも多く、現場ごとにインボイス制度の理解度や対応レベルに差が出やすいです。店舗ごとに経理担当者の経験や知識にばらつきがあると、適格請求書の確認漏れや誤処理が発生しやすくなります。本部と店舗間で情報共有や教育を十分行い、制度対応の統一が重要になってきます。
注意すべきポイント
仕入先の中に免税事業者が含まれている場合、控除縮小の影響を受けやすくなります。仕入先リストの見直しや、今後の取引方針の再検討が求められます。また、各現場のインボイス制度の理解度を統一するために全社的なガイドラインの作成や、現場担当者向けの教育が不可欠です。
免税事業者との取引が多い卸売業や小売業では、今後の税額控除縮小に備え、「どの取引先がインボイス登録済みか」「免税事業者か」の棚卸しが必要です。また、同時にやるべき重要事項として、取引先の棚卸しだけでなく、社内のインボイス制度理解度も同時にチェックすることです。
インボイス制度には例外や複雑なルールが多く、水道料金の検針票や電話料金の請求書など、経理担当者が誤認しやすいポイントが存在します。経理担当者の理解が不十分だと、誤った判断や不要な問い合わせが発生し、業務混乱の原因となります。
弊社が500人の経理担当者に実施したアンケートでは、以下のような項目で「十分に理解している」と答えた割合が低い結果となりました。例として挙げてみたので、理解ができているかチェックされてみてください。



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インボイス制度への対応が正確にできていない場合、「意図せぬ法令違反」や「益税・損税」のリスクが高まります。この機会に、取引先の棚卸しとあわせて、社内のインボイス制度理解度も再確認しましょう。
はい。無料でダウンロードしてご覧いただけます。
インボイス制度定着調査の結果レポートがありますのでご参考ください。
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